ドイツから来た腕時計

Posted at Sat, 25 Jun 2011 13:14:24 +0900 (JST)

もはやビョーキなのかもしれないが、これで打ち止めにしたいと思う。

今夏ささやかながら賞与が出たことを表の理由に、増えつつある時計を仕舞うために買った時計ケースが5個分なのに1個分のスペースが空いていることを裏の理由に、そしてしばらく前に買ったレマニア製クロノグラフが軽快かつ正確で非常に気に入ったことが本当の理由で、レマニア製の中三針なアンティーク軍用時計を買ってしまった。私が持っているオメガのクロノグラフであるスピードマスタと中三針のRAF 1953 Fat Arrowが同じブランドで組で持っているように。

私はたとえアンティークな品物でも常用できることこそ重要だというポリシの持ち主だ。そのため現代の生活では必須であろう耐衝撃機能が載っているものが基準となる。現代でも私の収入で手に入り、レマニア製で、中三針で、耐衝撃機能がある、アンティークな軍用時計で、今後もオーバーホールを続けられる程度に状態が良いもの…この条件に、数は少ないものの数種類がヒットするが、今回は旧チェコスロヴァキア空軍で1950年に支給されていたものを選択した。

Fornt View

Rear View

頑丈なスクリューバックに守られたキャリバは17石のLemamia 3050で耐衝撃装置であるインカブロックを実装。秒針が赤く塗られ、時針と分針はラジウムもしくはトリチウムで発光するが、さすがに経年劣化で光量はかなり弱い。スクリューバックに環状に彫られている“MAJETEK VOJENSKÉ SPRÁVY”はチェコ語で「軍当局所有物」。中央に4桁のシリアルと思しき数字がある。

これは元々、旧チェコスロヴァキア空軍向けにレマニアが生産していたものの、いざ戦争が勃発すると出荷先はイギリスへ変更され、当時はイギリス空軍傘下にあった旧チェコ空軍で使用された…という、当時の世情を反映した複雑な出自を持つ。

手許に届いた直後、ゼンマイをいっぱいまで巻き上げ時刻を合わせ、ダイアルを上にして一晩放置したところ、翌朝に3分、帰宅後に更に3分の進みが見られた。いくら機械式時計とはいえ日差6分ではさすがに使い物にならない。ひょっとして…と方位磁針を近づけると磁針がクルクル回った。帯磁しているようだ。機械式時計は帯磁すると早まることが多いが、これはRAF 1953 Fat Arrowと違って耐磁性能は無いので、手許にある消磁器を数回当て、方位磁針が反応しない程度まで消磁してみると、日差は2分ほどまで縮まった。しかし、私が持つ他の機械式時計と比べてもダントツの日差なので(アンティークな他の機械式時計でも日差20秒程度)、もうちょっと様子見したい。もしこれ以上日差が縮まらないようであれば、オーバーホールも兼ねて修理に出そうかと考えている。

私は海外からの個人輸入を両手で足りぬ程度経験しているが、今回ほどハラハラさせられたことは無かった。

今回はドイツの時計商から購入した。最初こそGoogle翻訳で日本語をドイツ語にして「海外にも売ってくれるか? あと、英語でやりとりできないか?」と問合せたところ、「海外にも出せるし、英語もOK。送料はタダ」との返答を得た。それ以降はスムーズに取引が進み、翌日には先方へ入金した。すると翌日に「発送した。追跡番号はこれ。詳細はドイチェポストのWebサイトから確認して」との連絡が来た。先方は郵便小包で送ったらしい。

が、ここから苦悶が続く。

まず、ドイチェポストで確認しても一向にステータスが変わらない。発送は6月10日だったが、そこから8日間「この郵便物はXXXX郵便局で受領しました」から文言が変わらないのだ。13日がドイツの法定休日(Whit Monday=聖霊降臨祭の翌月曜日)であることを差し引いてもさすがに心配になりドイチェポストのことを調べると、どうやらかなり怪しい。小包が勝手に開けられ中身だけ抜き取られたり、書留ですら届かず紛失するのが日常茶飯事だという記述が日本語のみならず英語でも見付かる始末。

「しまった。送料無料という時点で怪しむべきだった。追加料金を払ってでも配達業者を指定すべきだった」

と思ったところで後の祭り。4桁のユーロを払っているのに紛失された日にゃぁ目も当てられないが、ここは腹を括るしかない。

教えられた追跡番号の形態(RRxxxxxxxxxDE=DEは発送国であるドイツを指す)から、国際通常書留郵便であることは判った。またドイツ発の郵便で船便は滅多に選択されないことも知った。ドイチェポストと日本郵政は配達情報を互いに交換しているので、この追跡番号は日本郵政のWebサイトでも確認できるものの、当たり前だがこちら確認しても状況は同じだ。

海外での郵便配達事情はある程度把握しているつもりなので、2週間状況が変わらなかったらアクションを起こそうかな…と考えていた17日、「この郵便物は日本へ輸送されるためにフランクフルトへ転送されました」とステータスが変わった。フランクフルトは内陸なので航空便だろう。中身が無事かどうかは判らないものの、日本へ向かっていることは確からしい。その翌日になると「到着した国の配達業者に情報が無ければ、今後これ以上情報は更新されません」と表示されるようになり、情報が更新されなくなった。なかなかの割り切り具合だが、日本郵政の手に渡ったことだけは判る。

あとは日本郵政のWebサイトしか頼りにならない。調べてみると、ドイツ時間で17日01時28分にフランクフルト発、日本時間18日23時47分に成田着と出た。18日は土曜日なので東京税関は閉庁、通関は週明けの20日から行われるだろうことは想像できたが、今度は通関手続中というステータスが2回表示されて止まってしまった。「なんで通関を2回やるんだ?」と調べると、税関が検査指定した場合は2回表示されるらしい。偽造品や禁輸品で引っ掛かりやすい国からの国際郵便物は検査指定されるらしいが、ドイツがそんな国とは思えない…まぁ関税の計算でもするんだろうと思っていると、21日15時19分に税関を通過して成田から自宅最寄りの配達郵便局へ転送、翌22日に不在で持ち戻ってしまったところを電話して再配達してもらい、12日掛かって手許に届いた次第である。ちなみに関税は3,600円、日本郵政の手数料は200円だった。

Delivery Report

こうしてハラハラしながら待たされた時間を考えると、UPSやFedEXやDHL等の国際宅配業者のスピードやトレーサビリティ能力は恐ろしいほどだ。以前から「国際宅配業者の送料は高いなぁ。場合に依っちゃぁ品物より送料のほうが高いじゃん」と考えていたが、高いだけのことはあるのだ。国際郵便で小包を送ってもらったのは今回が初めてだが、日本はまだしも、発送した国の郵便事情を考えると、海外から通販で買う場合、配達業者はできるだけ指定したほうが良いなぁという至極当たり前のことを経験した。個人的にはUPSがお気に入りである。なお、今回の国際通常書留、ドイツからの郵便料金は5.5ユーロだった。

ちなみにドイチェポストはDHLを子会社に持っており、ドイツ国内の郵便配達はDHLがやってるそうだが、少なくともドイツ国内での品質はあまり良くないらしい。