OMEGA “The Royal Air Force” Ref.ST2777 メモ

Posted at Sun, 06 Feb 2011 08:11:46 +0900 (JST)

さすが軍向けに作られただけあって、素性を知るための情報があまりに少ない。さりとて安くない金額で買ったものの素性は知りたいし…と、ついカッとなって個人的にまとめたメモ。今は反省している :-p

なお、正確性等は一切保証していないので悪しからず。また、適宜更新していく。

【歴史】
オメガがイギリス国防省からの発注で、イギリス空軍向けに1953年の1年間だけ5,900本を製造。が、当初納品分の文字盤の蛍光塗料に放射性物質であるラジウムが含まれていたことが判明、イギリス空軍はトリチウムへ変更するマイナーチェンジを決断。その変更を見分けるため、文字盤の6時方向にある、イギリス政府官給品であることを示す「ブロード・アロー」を太いものに替えた。それが通称“Fat Arrow”と呼ばれる所以である。なお、マイナーチェンジ前は細かったので、それは通称“Thin Arrow”と呼ばれる。手許にあるのは“Fat Arrow”だ。

Front View

【構造】
キャリバは30mm径の283(17石)。当時のイギリス空軍の要求仕様(軍規格)で、クロノメータ基準である“日差10秒以内”という仕様に適ったものを採用している。

文字盤のOMEGAロゴの下にある丸T記号は、先述のトリチウム(Tritium=三重水素。これも放射性物質)を示す。

耐磁性能は、民生品では60 Oe(エルステッド)であるところを、要求仕様(軍規格)から900 Oeまで耐えられるようになっている。そのためケースは大型のねじ込み式の防水とし、内装は1mm厚の軟鉄で覆われ、外装は鉄の合金という二重構造である。また内部にはインカブロックによる耐震装置も備える。今では公であまり使われなくなったcgs単位系であるエルステッドが出てくるところに時代を感じる。

風防はプレキシグラス(Plexiglass=透明アクリル樹脂。飛行機の風防や窓ガラスにも使われている。Plexiglassは商標)で、スピードマスタとは異なり、山なりの丸みを帯びている。

ベルトはNATO軍規格“G-10”の時計バンド。これは2011年の現代でも都内のミリタリーショップ等で新品が購入可能で、数本を予備として購入済。下の写真は現在購入できる主なカラーバリエーションで、左からオリーブドラブ・ブラック・JB・ブラウン・グレー。真ん中のJBとは、映画『007 ゴールドフィンガー』の初代ジェームス・ボンド(JB)向けに作られたもので、NATO軍で実戦投入されたものではないが、材質や製法などは全て当時と同じである。

G-10 Belt

裏蓋に刻まれている文字列は以下の意味がある。

Rear View

↑ — ブロード・アロー。イギリス政府官給品であることを示す
6645 101000 — NATO管理コード。6645は「計時装置」を示す
6B — イギリス空軍を示す
542 — 「中央秒針、16石、耐磁性メタルインナーケース、耐衝撃装置あり」を示すNATO管理コード
XXXX/53 — シリアルナンバと支給年の西暦下2桁(1953年)

【参考リンク】
調べるといくつかヒットするが、マトモなのはこの2ページぐらいしか無い。
「Omega raf “fat arrow” #2777」
「RAF issue Anti-Magnetic Chronometer.」