24時間表記の腕時計

Posted at Sat, 23 Jul 2011 12:43:11 +0900 (JST)

もう腕時計は買うまいと思っていたものの、同僚の軍事マニアからこんなことを訊かれたのが運の尽きだ。

『文字盤が24時間表記の腕時計は持ってないの?』

確かに持ってないが、1つぐらい持っていても良いかもしれない…そう考えるだけで充分ビョーキだ。

調べると、ダイアルが24時間表記の機械式時計は、懐中時計も腕時計もアメリカで使われていたようだ。陸軍では砂漠の中を突っ走る戦車乗りが、旧航空隊(現空軍)では戦闘機乗りが、GPSが実戦配備される前にそれぞれ使っていたらしい。

アメリカ軍の軍用時計では「A-11」という規格が有名だ。1937年に標準として指定されたもので、ハック機構(秒針規制機構=秒針を止めての秒合わせができる機能)を搭載し、ストップウォッチ機能も持っている。同じA-11でも複数のメーカが様々なタイプのものを納入しており数千の陸軍航空隊で使われたが、その後はA-11を発展させる形で標準化が進んでいる。今回購入したものはその発展形の「A-17A」で、ブローバ製だ。1949年にアメリカ陸軍航空隊のパイロットや航海士に支給されたものになる。ブローバと言えば、かつてNASAがマーキュリー計画やアポロ計画をはじめとする宇宙開発で宇宙飛行士に身に付けさせる腕時計としてオメガのスピードマスタを採用することを決めた際に、NASAに対してかなり露骨な妨害工作をしたことでも有名だが、その話はあまりに長くなるうえこのエントリの本題ではないので割愛する。

Front View

Rear View

なぜ2個あるのかと言えば…まぁ特に意味は無い。強いて言えば同じ程度のものが同じ売価で並んでいたから「予備機として買うか」というぐらいの理由だ。両者はダイアルの色が白か黒かの差しかなく、キャリバも同じ10BNCHで、ハック機構とインカブロックによる耐衝撃機構が実装されている。

背面の打刻内容から、白ダイアルのほうが数年古いようだ。ただ、実際に受け取ってから状態を確認すると、白ダイアルのほうがコンディションが良い。

ゼンマイをいっぱいまで巻き上げ、机上に1日放置したときの日差は1分弱だが、実際に腕に付けたときは日差が15秒程度に縮まるという不思議な挙動をする。ふつうは逆だと思うのだが、常用できる範囲なのでそのまま使っている。

24時間表記は若干の慣れが必要だ。上記の写真は12時18分15秒を示しているが、うっかり読むと6時もしくは18時と読んでしまう。ただ、1日のうちどの程度時間が経過しているのかが一目瞭然というメリットはなかなかのものだ。上記の写真で言えば既に1日の半分以上が経っていることが判り、柄にもなく1日を大切にしようと考えてしまう。

今回はアメリカ・テキサス州の時計商から購入したが、前回のレマニア同様「USPS(アメリカ郵便公社)で送るなら送料無料だよ」との申し出を受けたものの、前回を教訓に『追加料金を払うからUPSで送ってくれ』と別途指定した。アメリカはドイツ以上に郵便事情が良くないことを知っていたからだ。追加料金として50ドルを払ったが、さすがUPS、これまでの十指に余るUPS利用経験と同様、それに見合うだけのパフォーマンスを発揮してくれた。

Delivery Status by UPS

UPSは3回の配達で受け取れないと発送者に荷物を戻してしまうという欠点はあるものの、貨物のトレーサビリティは他社の比ではない細かさで表示されるうえ、コールセンタに電話すれば、私のようなサラリーマンが受け取れるであろう土日にヤマト運輸が再配達してくれるという決定的な利点がある。この安心感は海外との貨物のやりとりでは必須だろう。