式年遷宮

Posted at Sat, 07 May 2011 14:09:58 +0900 (JST)

このblogを含む、自宅サーバをマイグレーションした。

これは数年に一度、無停止で稼動しているサーバのメンテナンスと、サーバ周辺に関する知識の復習と、その時代の技術の把握のため、まとまった休みが取れるGWや夏休みに開かれる恒例行事だ。言わば伊勢神宮における式年遷宮の如く、己のヘタクソな技術力と年々弱る記憶力の維持のためにやっているのだが、今回はそれに加えて今夏予想される電力不足対策も兼ねて4年振りに行った。

それまでは、最大消費電力5Wという低消費電力の初代Fit-PCに、OSはDebian Etch→Lennyと乗り継いで来たものの2台構成としていた。これは、初代W-ZERO3から使い始めたスマートフォンの便利さに目覚めてしまうと、ISPから払い出されているPOP3のE-mailアドレスをIMAP化してスマートフォンからも送受信したい欲求に駆られた結果、当初の1台構成にやっつけ仕事でそれ専用に初代Fit-PCをもう1台追加する構成となったものだ。

しかし初代Fit-PCは、CPUがAMD製のx86アーキテクチャな組込機器向けで、クロックが当時でもかなり遅い部類に入る500MHz、HDDこそ2.5インチIDEで好きな容量を選べるとはいえ、RAMに至っては512MBしか実装していないため、マルチドメインでMySQLが背後で動くWordpressなんぞ動かすと、時として「固まってるんじゃないか?」と思うぐらい処理に詰まる。記事を投稿してCPUが100%で張り付きRAMを食い潰しHDDへスワップアウトしまくっているところに1日200通ほど送受信されるE-mailを捌いているのだから当然と言われればそれまでだ。この構成が稼動し始めた4年前はそうでも無かったが、IMAPサーバには10万通を越えるE-mailが滞留し、Wordpressに拙文が1,400ほど投稿してある現在ではそうも行かないらしい。それに比べてISPから払い出されたE-mailアドレスのIMAP化サーバが余裕綽々というアンバランスな状況も良くない。

その間にFit-PCも進化した。Fit-PC2→Fit-PC2iと順調にCPUクロックとRAM容量を上げていき、IntelがAtomをリリースしたこともあって、初代Fit-PCと同じようにファンレスかつ小型で最大7Wという低消費電力でありながら、CPUはAtom Z550(2GHz)のHT、RAMは2GB、HDDも2.5インチSATAとなった。1台にマイグレーションすればトータル3Wの消費電力を下げることができる。今年3月中旬には遅れまくっていたDebian Squeezeがリリースされたため、先行してIMAP化サーバだけLennyからdist-upgradeしたが、サーバとして運用するには現在のところ特に目立った障害も無い。今年は仕事の都合上、まとまった休みが取れそうなのはGWぐらいしか無さそうであることも判っているため、タイミングとしては今だ。

この種の作業の鉄則だが、移行手順は可能な限り簡素にした。Fit-PC2iを組み上げ、Squeezeを最低限のみインストールし、IMAP化サーバのデータを移行、同じ機能が使えるように仕立てた後にもう1台の全データを移行し、これまでと同じ全ての機能を満足させるよう設定する…というものだ。

事前の予想どおり、機能させるまでは手間取った。主にはDebian特有なことで有名なApache2のconfigと、SMTPを使うときのSASL Authenticationだ。前者はなぜこうも複雑怪奇なconfig構成なのか不明だが、調べまくることで理解することができた。マルチドメインではもちろん、そうではない場合でもこの手順を理解するのは相当の根気が要る。恐らくセキュリティに寄与しているのだろうが、WoodyやSargeの頃はこうでは無かっただけに残念だ。後者はメジャーバージョン毎に設定内容が異なるため更に厄介である。これも調べまくってやっと動かすことができた。つまりはMTAがspamの温床となるオープンリレー状態にならなければ良く、もしこの機能が何かしらの理由で壊れた際にはMTAとしての送信機能が死ぬことが望ましいので、これはこれで良いと思う。結局、これらの全ての機能を移行するのに8時間ほど要した。今は旧Fit-PCをGW明けに会社の同僚へプレゼントすべく、KnoppixでHDD内容をNCSC-TG-025水準で消去している。

ふだん社会人としては早寝早起きを地で行く生活だ。5時半頃起き21時半には眠くて仕方が無い。しかし休みに入ると一気に逆転する。14時頃起きて翌6時頃寝るという宵っぱれの朝寝坊となるが、この種の作業はなぜか深夜のほうが捗る。これは昔からで、今回も20時頃にスタートし翌4時頃に完了した。理由は不明だ。単純作業だからかとも考えるが、言われるほど単純な作業の繰り返しでもない。深夜にラジオを聴きながら集中して作業するのは好きだが、もうちょっと歳を食うと体力面でそうも行かなくなるのかもしれないのが残念である。