人は、自由を求める

Posted at Fri, 31 Dec 2010 18:28:01 +0900 (JST)

あと6時間ほどで今年も終わろうとしています。

この業界に身を委ねて十数年経ちますが、今年ほど見た目で判り易い変化があった年も珍しいです。それは「スマートフォン、殊にAndroidの普及速度の目覚ましさ」を指すのですが、個人的にはここまで急速に一般ユーザの手に広まるとは考えてもみませんでした。

私も2005年12月発売の初代W-ZERO3を皮切りに、約5年間、この種のガシェットを持ち続けていますが、現在はAndroidマシンを複数台所有する状況に至っています。

…複数台?

そう、複数台です。なぜか。

今月中旬、親友の華燭の宴に列席するためグアムに行ったのですが、この旅の準備とその旅程で貴重なことが判ったからです。

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現在の私のメインキャリアはKDDIですが、現行のKDDIで販売されている移動機をそのままグアムに持ち込んでも使えません。これは、KDDIではグアムでのcdma 1x方式のローミングに非対応で、GSM方式でのみローミング可能であるにもかかわらず、KDDIでは現在、GSM方式に対応した移動機の種類が少ないことに依ります。私はSH002を使っていますが、こいつはGSM方式に非対応なので使えません。

ではどうするのかというと、グアムに限らずcdma 1x方式でのローミングに非対応の地域に渡航するユーザが自ら、どこぞから調達したSIMロックフリーなGMS方式の移動機にKDDIのSIMを挿せば、現地ではGMS方式でローミングし、料金も月々のパック料金から差っ引く形で使えるようになります。3Gというと国際ローミングが当たり前というのが世間一般の認識ですが、そんなKDDIを使っている一般ユーザからすれば意味不明な変則的運用を迫られており、出国前にちゃんと調べないと渡航先で「ケータイが使えん!」と痛い目に遭うことになります。

つまり、現在KDDIを使っていてGSM方式の移動機を持ってない私は、グアム到着後、現地で新婚夫妻や一緒に列席する親友と連絡を取る手段が無いのです。

以前であれば、出国前に空港でGSM方式のSIMロックフリーな移動機をレンタルするかなにかしたでしょう。しかし今では比較的安い価格でSIMロックフリーな移動機を国内で買うことができます。しかも日本では一世代前の「通話(とSMS/MMS)しかできません」という旧式のものではなく「Androidを載せたスマートフォンが」です。

『ここはひとつ、キャリアに縛られないSIMロックフリーなAndroidでも買っ…どうしようかな?』

2秒考えて、買うことにしました。

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グアム行きの前にちょっと調べたところ、日本でも比較的低価格で入手しやすく、IS01のような大型のものではなく、私にとっては外せない条件である「物理キーボードを載せた」Android機として「Xperia X10 mini pro」が挙がりました。
国内では約3万円近辺で購入可能で、なぜか既にまとめWikiサイトも存在します。

XPERIA X10 mini pro

どうせなら現地で買うか…とも考えたものの、どうやら現地でサービスインしている3キャリアでは売ってない様子(そして実際に現地で方々歩き回ったものの売ってなかった)。渡航直前の日本で約3万円で入手してから出国し、現地ではかなり活躍してくれました。

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出国前からちょっとずつ弄っていたのですが、やはり「キャリアに縛られない」というのは非常に重要なのかもしれません。ユーザにとっての自由度がまったく違います。ここでいう自由度とは「アプリが自由に加減できる」ではなく『移動機の全てを弄れる』、換言すれば「rootを取れる」ということです。

今回のXPERIA購入で判ったことですが、海外で売られているSIMフリーなものにも余計なアプリが入っています。ゲームの体験版やFacebook専用アプリ、またキャリアに縛られてないが故に存在するのであろう、Sony Ericssonが提供するスマートフォン向けサービス用のアプリ等です。
ただでさえリソースが限られるモバイルガシェットの代表でもあるスマートフォンにそんなもんは要りません。余計なトラフィックを吐く可能性もありますし、削除したくなるのが人情でしょう。少なくとも私はそう考えます。

そこで色々調べるのですが、さすがグローバルモデル、ハッカーの絶対数が違うようで、ワンクリックでrootと非rootを行き来できる野良アプリが公開されています。それをインストールしてrootとなり、これまたrootでしか使えないバック
アップアプリを使って、これらのアプリを削除することに成功します。

またこれは日本で使われることを想定していないのか、日本語フォントが微妙に違います。Linuxを使っているとよく遭遇しますが、日本語の漢字と見比べると画数がちょっと増減しているものがあります。大半が合っているのに、よりによって良く見る漢字に限ってそのテの違いがあるのでイライラするのですが、それもrootを取ってフォント(TrueTypeフォントファイル)を入れ替えることで解消できます。これはデスクトップPCでLinuxを使っている私では極めて自然な感覚なのであっさり差し替えてしまいました。

あとはIS01を弄っているときに見付けた有用なアプリを片っ端からインストールすることで、有用なガシェットとなりました。マルチアカウントメーラやSSHクライアントソフト、WebDAVクライアントなどです。タバコの箱より若干小さいサイ
ズのガシェットにこれだけの機能を盛り込めるとは、長生きはするものです。

また、IS01で使ったGoogleアカウントと同じアカウントを設定すると、そのアカウントで支払った有料アプリがそのままインストールできるという事実にも驚きました。つまり、こちらは有料アプリの購入は1台分だと思っていたものの、実際には異なり、Googleアカウントを共用してしまえば(いちいちAndroid毎に異なるアカウントにする必要性があるかどうかは、その人の使い方に依るので一概には言えませんが)、1度払った有料アプリは複数台のAndroid機にインストール可能であるということです。これはGoogleが想定していない穴なのか何なのかは不明ですが、とりあえず現状ではそうなっているようです。

ちなみに私は何度か、あまりソフトを削り過ぎて、さまざまなアプリが機能しなくなる事態に見舞われましたが、Androidそのものを再インストールすることでそこから復旧させています。こんなこと自体、キャリアに縛られたAndroidでは信じられない行為となるのでしょうが、SIMロックフリーともなるとそこも自由。Sony EricssonのWebサイトにあるOSアップデートソフトで復旧可能です。

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こういう体験をしてしまうと、日本特有の、キャリアが手足を縛って売っているAndroidなスマートフォンを使う気にならなくなります。日本でも常用したくなるのが人情です。

しかし、ご存知のように、ここで法的な壁がはだかります。海外から持ち込んだ移動機に日本のキャリアのSIMを挿して使うのは、電波法と電気通信事業法に違反します。これは、日本で永続的に使う場合は、電波形式や出力、プロトコル等が総務省が定めた規定内に入っているか試験して合格しなければならないのと、日本の公衆網に接続する機器は事前に認証を得なければならないのと、2面があります。しかし例外は無い法律が無いように、これらも「海外から一時的に持ち込まれた、海外キャリアとローミング接続時」は適用が除外されています。

残念ながら今回購入したXPERIAは、日本はおろか、欧州の規格にのみ合格しているだけですので、国内での常用はできません。海外キャリアのSIMでローミングするのは問題ありませんが、まさかここでバカみたいに高いローミング料金を払い続けるほど、私も盲目的ではありません。

今ではE悪や日本通信が、国内でも使えるSIMロックフリーなAndroidを販売していますが、そんな世の中が来るのをジッと待つしか無いようです。2011年はそんな年になって欲しいものだなぁ…という感想で、今年最後のエントリにしたいと思います。