新宿周辺の書店事情
現時点では日本ではどうなるか不明だが、最近は電子書籍に関する記事が多い。しかし個人的には「本は紙のほうが便利」であることに変わりはないので、当面は電子書籍を買うことは無いと思われる。
そんな中、最近の新宿周辺の書店事情が変わってきている。
こと電気・電子系の工学書籍や数学や物理学の理学書籍について、私は上京した大学時代から今まで、紀伊國屋書店新宿本店をメインの書店としてきた。少なくとも今私が住んでいる、新宿から5分の某私鉄の某駅周辺や、某地方都市にある実家に比べれば品揃えは抜群に違っていたし、なによりせっかちな私は、密林で注文して届くまでのタイムラグは許し難いものがある(かつて密林で和書を買ったらカバーが盛大に破れたものを届けられた経験も拍車を掛けている)。
ところが、その紀伊國屋書店が最近、理工学書籍と同じフロアにあった医学書籍にフォーカスした売り場にリニューアルしたのを契機に、理工学書籍売り場を大幅に削減してしまった。はっきり言えば某地方都市の書店よりも品揃えが貧弱になったのだ。以前は在庫として書棚にあった、ちょっとマニアックな書籍が一斉に消えてしまい、買おうと思ったら「取り寄せになります」とのこと。
理工系学部を抱える大学が周辺にはいくつかあるが、教員や学生は生協や学内の書店で買うのだろう。そういう意味では新宿周辺で理工学書籍の需要が少ないのかもしれないが、あんなに一気に縮小されてしまうと、紀伊國屋書店へ足を運ぶ回数が減ってしまうことは間違いない。売れる部数が少ない理工系の新刊書籍は初版のみで書店から消えることが多く、だからこそ書店で見かけたときには買うことを躊躇わないようにしているが、肝心の「書店に並べられる売り場」が狭くなっては、新刊書籍を目にすることができなくなる。
新宿という日本随一の商業地帯でこの状況は、かなり残念である。それだけ今は総合書店が実店舗として生き難い時代になったのかもしれない(「だったら170円払って神保町に行けば良い」という声もあるかもしれないが、神保町ではかなり前からこの傾向になってしまい、古書以外を買うのに神保町へ行くことはなくなってしまった)。
変わって台頭するのは、斜向いにあるジュンク堂書店新宿店だ。さすが「愚直なまでに“本”の品揃えにこだわります」と言っているだけのことはある。リニューアル後の紀伊國屋書店では見かけなくなってしまった、ちょっとマニアックな書籍も、それ以上にニッチかつマニアックな書籍もちゃんと書棚で扱っている。昨日も紀伊國屋書店では書棚にも在庫にもなかった書籍がジュンク堂書店には書棚に収まっており、心置きなく内容を確認して購入することができた。うっかりすると5〜6,000円はする理工系書籍を数冊購入することもあるので、内容を確認できるメリットは計り知れない。こういう状況を鑑みると、今後はジュンク堂書店をメインの書店に切り替えざるを得ないだろう。
ただジュンク堂書店にも不便なところはある。デビットカードで決済できないことと、新宿三越アルコットのジュンク堂があるフロアまで移動する手段が事実上エレベータのみで、そのエレベータがなかなか来ないことである。クレジットカード決済ができるので良いと言えば良いのだが、その場で現金決済と同様の扱いになるデビットカード決済にはぜひ対応してもらいたいところである。
なお、新宿周辺の大規模書店としては、西口のコクーンタワー地下にあるブックファースト新宿店も挙がるが、残念ながら品揃えが紀伊國屋書店以下なので、個人的には評価対象外である。
また、以上の記述は、仕事で読まざるを得ないネットワーク系やコンピュータ系などのいわゆるIT系(笑)技術書籍には当て嵌らない。これらに関する情報はInternetで原典に辿り着くことができる場合が多いため、私はこれらに関する書籍を買うことは少ない。従って在庫の増減をあまり気にしていないうえ、そもそもこれらの分野は日進月歩どころか秒進分歩で、書籍に載っている技術が陳腐化するスピードがあまりに速く、買う意義があまり感じられないからだ。